長女の一人旅

一人旅

昨夜、長女が人生で初めての
夜行バスに乗って一人で旅立った

どうやら半年ぐらい前から
楽しみにしていた歌手の
コンサートを見に行くらしい

コロナ禍でなかなか行きたい場所や
やりたいことに制限がかかっている
ここ数年なので

とても楽しそうだった

朝からバタバタと予約していた
ネイルサロンに行き
その足で学校へ行き
夕方戻ってきた

アレコレと自分でバイトした
お金でやっているので
全く文句もないし

自分で決めたことは必ず遂行する
長女を見て単純に凄いなと思う

夕方リビングで僕や奥さんに
コンサートはこうなると思う
ネイルがとてもかわいくできた

などなど、もうテンションが
溢れかえっているのが
聞いててわかり

聞いている僕も楽しくなった

最寄りのバス停に
そろそろバスが来る時間になり

いよいよ長女が家を出る際

お金は持ったのか?
忘れ物はないか?
深夜のバスで一人で大丈夫か?

なんて、よくよく考えたら
二十歳の子に随分と過保護な質問を
僕と奥さんは投げかけていたが

そんな心配はどこ吹く風で

長女は淡々と準備を進め
「じゃ行ってきます」と
いつものように家を出ていった

なんだか凄いよねぇ…
私は一人で夜行バスに乗るなんて
怖くてできないなと

奥さんが言っているのを聞きながら
僕は夜行バスは楽しそうだなぁと妄想していた

そんな長女の初めての夜行バス出発の
余韻もなく僕と奥さんはリビングに戻り
一息ついていた

すると5分も経たないうちに
奥さんに長女から連絡があり
どうやらバスの中で使う
予定の空気を入れる枕を忘れたらしい

電話を切った時には
既に僕に届けさせるという話が終わっていて
僕はその枕を片手に
長女が高校生の時に乗っていた自転車に乗り
長女を追いかけた

何時にバスが来るのか知らなかったので
必死に追いかけて長女の姿を探して
バス停に行く前で見つけた

「だから忘れ物が無いか聞いただろ」
と言いながら

結局そこからバス停まで
僕と長女は話をしながら
トコトコと歩くことになった

なんだか長女と二人で
歩くのは久しぶりで
僕としては
とても楽しい散歩になった

長女をバス停に送り
じゃあ気をつけて
楽しんできてねと言い

自転車に乗って家に向かう途中
なんだか月がとても綺麗に光っていた

一人旅

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