姿を変えていく思い出

公園

僕と奥さんが
共に人生を歩みだして
毎日が辛くて仕方ない時期がある

それは僕たちが
仲が悪くなったのではなく

僕の仕事が
どうにもこうにもいかなくなり
明日のご飯代や電気代などを
毎日悩んでいた頃

そんな後ろ向きな
日々を過ごしていた

顔を合わせても
何か楽しい話が出来るわけでもなく

僕はただただ
「どうしよう」と悩み

奥さんはどうすることも出来ず
ただただ
二人はうつむいていた

そんなある日
気分転換に散歩でもしようと
奥さんが提案し
僕も断る理由も無かったので
一緒にトコトコと歩いた

歩いている時も何か楽しい話が
出来るわけでもなかったけど
ただただ二人で歩いてみた

すると
近所のこんな公園あったっけ?と
思えるような

立派な桜の木が
数本生えている公園があった

なんとなく引き寄せられるように
僕たちはその公園に入り
なんとなく桜の樹の下で
ぼぉーっとしていた

きれいだね…と
お互い同時に言った言葉に
なんとなく笑ってしまった僕を
奥さんも笑ってくれた

ひらひらと舞い降りた
桜の花びらが
奥さんの髪に落ち
僕はそれを眺めていた

それからなんとなく
公園を散策してみようと話し
手をつないで歩いてると
なんとなく元気が出てきて

奥さんに「頑張るね」と
一言だけ言った

奥さんは何も言わず
ただうなずき
僕もそれだけで満足し
公園を後にした

特に多くを
語ったわけではないけど

なんか、居心地がよく
「また行こうね」と
二人の思い出の場所が1つ増えた

それから特に
落ち込んでなくても

その公園に
二人で行くようになり

桜の時期じゃないときにも
桜の樹の下で
なんとなく語り合った

「また来年はここで桜を見ようね」と言い

毎年、僕たちは
楽しみにしていた公園だったけど
先日行ったら公園内に重機があり
桜の木はすべて撤去されていた

多分、公園の工事を
しているんだろうけど

なんだか僕たちの心に
ぽっかり穴が空いたような気持ちになった

あの桜たちはどうしたんだろう
この公園はどうなっていくんだろう

そんな話をしながら僕たちは
その公園をあとにした

帰り道で
ふと奥さんの顔を見ると
なんだか悲しそうな
少し寂しそうな顔をしてて
僕も同じ気持ちになった

いつだって思いを馳せる
物や場所はあるけど

辛い時に見つけた
心の拠り所は
形を変えてしまうと

とても切ない気持ちになる

それでも
また公園が完成したら
行ってみようねと

いつもより少しだけ強く
奥さんの手を握って
一緒に帰った

目に見える物は変わっても
僕たちの気持ちは
あの頃に置いてけぼりに
どうしてもしたかったので

ありがとうという
気持ちと共に

公園

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