樹齢1000年以上の神木

神木

もう10年以上前の
出来事ではあるんだけど

僕が仕事で大失敗をして
毎日がグレーなベールに
覆われていて

何をするにも
後ろ向きな時期がありました

正直、僕は自分のことで精一杯で
家族のことも
奥さんのことも

しっかり見てあげる余裕が無かった

毎日どうしようどうしようの連続で
前に進む努力も無ければ
好転させる努力も無かった

そんなある日
ちょっと気分転換に
パワースポットに行ってみない?という
奥さんの提案に車を走らせた

久しぶりに車を走らせ
自然いっぱいな風景を
とにかく走って走って走った

話によると
物凄い樹齢の大木があり

そこの神社は
何か感じるものがあると言う

信じる信じないより
潜在意識で何かしなくちゃと
ただただ僕も奥さんも
その神社に向かったんだと思う

数時間経ち現地に着いたら
なんだか妙に
空気が暖かくて

呼吸がすっと
通るような感じがした

参道に入り
ゆっくりと歩き進んでいくと
そこには

今まで見たこともないような
大木が立っていた

わぁすごいなという感情より
なぜだか涙が溢れてきた

会話はほぼ無かった僕たちは
手をつなぎゆっくりと
その大木の前まで歩き一礼して
その大木にそっと触れてみた

なんだろう…

大きな木だったから
上を見上げたんだけど
見上げて枝葉の間から
差し込む光を見ていると

なんだか後頭部の後ろ辺りから
コールタールのような

重い重い粘着質な何かが
ボトッと剥がれ落ちたような
感覚になり

すぅっと肩の当たりが
楽になっていった

目に見えないし
あの時はとんでもなく自分自身
調子が悪かったのもあったんだけど

説明できないほど
気持ちも身体も
ふっと楽になった

そしてお参りを済ませ
近くの定食屋さんで
エビフライ定食を一緒に食べているときに

あそこ凄かったよね
あれ綺麗だったねと
気がついたら僕たちは
夢中で色々と話しをしてた

エビフライでお腹がいっぱいになり
車を停めている駐車場に歩いて向かうとき
先程の神木に下に落ちていた
2枚の若葉を僕はそっと出した

これをまた来年お戻しに来ない?
そう言うと奥さんは
「うん、そうしよう毎年来よう」と
久しぶりに見る
僕が大好きな笑顔で話してくれた

何事も気の持ちようとは言うけれど
その気を使うタイミングや
キッカケや気付きは

もしかしたら
僕のような鈍感な人間は
こういったキッカケが無いと
なかなか抜け出せなかったのかもしれない

そして奥さんは
僕の鈍感さを見抜いて

連れてきてくれたのかなっとも思う

相変わらず
助けてもらってばっかりだ

あれから
もう10年以上経つけれど

今では家族でたまに
訪れる場所にもなったし
奥さんとは毎年定期的に
寄らせてもらっている

本当に全てをフラットにできる
僕と奥さんにとって
大切な場所となりました

神木

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