僕と奥さんとコロッケ。

コロッケ

多分、8年ぐらい前だったと思うが

僕は天狗になり
周りが見えてなかったせいもあり
会社を倒産の危機に
持っていってしまったことがある。

元々、能力があって
起業したわけではないし

何か得意なものが
あったわけでもないが
どうしても起業したいという
気持ち先行で事業を起こした

銀行には多額の借金と
取引企業への支払などが遅延して
従業員も辞めていき
もう思考停止していた時がある

それでも助けてくれた
数少ないスタッフと
税理士の先生の指南もあり
倒産は首の皮一枚で免れたが
生活は一変した

今思えば、そんな時こそ
奮起して仕事を取っていかないと
どんどん疲弊していくばかりなのに

もうそうなると
人間とはもろいもので
どう進んでいいかわからなくなる

でも、状況は一気に底に落ちていく
ここが多分、本当の意味で
理解できてなかったんだとも思う

当然、仕事は続けたし
何も投げ出したりはしなかったが
家で笑うことが全くできなくなっていった

子どもは何があったかわからないまま
死んだ魚のような目をした
両親を黙って見ていてくれていた

そんなある日
奥さんが気分転換に散歩に行こうと言い出し
僕も、そうだなっと思い
近所の見慣れた景色をトコトコと
二人で歩いてみた

別段、話をすることもなく
ずっと黙って二人歩いていると
昔ながらのコロッケ屋さんがあった

こんな所にコロッケ屋さんあったかな…
と思いつつも
素通りしようとした僕を引き止め
奥さんが「コロッケ食べようよ」と
1個70円のコロッケを2個買ってくれた

そこから少し歩いたところにある公園で
二人ベンチに座って
熱々のコロッケを食べていると
なんだか涙が止まらなくなり
色々と僕から奥さんへ
話だしたことを今でも覚えている

奥さんは、うんうんと黙ってうなずき
ただただ聞いてくれた

僕にとっては
それで十分で
それが助けとなった

それから、たまに奥さんと散歩をする際は
そのコースにコロッケ屋さんが加わり

1個70円のコロッケを
大切にゆっくり噛み締めながら
一緒に公園のベンチに座って
食べお話を繰り返した

会社のこと、子供のこと、家族のこと
言い出せば切りがないぐらい
本当にどうしていいかわからなかったが

そのホクホクとしたコロッケを
一口食べることに
少しずつ、凝り固まった心と
思考が溶けていきだした。

今思えば、倒産しようが
従業員が全員いなくなろうが
自己破産しようが

自分が信じて
頑張っていたのであれば
「ごめんなさい!また頑張ります!」と
家族に頭を下げ
関係者にも頭を下げ
笑顔でリスタートすればいいだけだ。

プライドや見栄と
本当に大切なものは何か?を
キチンと決めて
家庭や会社は持つべきだなと。

人生の中で家庭にも会社にも
迷惑は絶対にかける

で、あれば迷惑をかけてないと
勘違いした人生を送るより

迷惑かけているんだから
僕にしかできなことを
やってあげ続けようと

思い努力することが
本当は大事だと
今では強く思う

そんな気持ちのキッカケは
奥さんと1個70円のコロッケでした。

コロッケ

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