19歳のほろ苦い失態

僕は奥さんと付き合い出した頃
とんでもない失態を犯したことがある。

19歳になったばかりの冬
僕たちはお互いに地元を離れた
場所で出会い
付き合うようになったんだけど

付き合いだして半年が経った頃
ちょうどクリスマスで
その日は昼間から奥さんと
街ブラをして楽しんでいた。

日も陰ってきて
そろそろ夕食を食べに行こうという話になり
僕はカッコつけようと

たまたま目に入った
フランス料理店の前で立ち止まった。

「ここにしようよ」

そう言って
奥さんの手を引き店内に入ると
それはまぁ今まで見たこともないような
雰囲気で包まれていて

パリッとしたフロントマンに
席までエスコートされた。

奥さんと「美味しい料理だといいね」と
ワクワクしながら席に付き
出された水を一口飲んでメニューを開いた。

そこで全てが狂い出した
いや入店する前から実は狂っていた。

スープ1つで5,000円。
読めない料理が7,000円。
コースについては20,000円とか
30,000円とかと書いてある。

財布には1万円程度しか入ってなかったので
どうしよう、どうしよう、どうしよう…と
頭の中が真っ白になった。

奥さんもメニューと僕の顔を見て
事件に気がついてくれたが
どうしたらいいのか固まっていた。

しばらく考えていたが
実際はどうしようか
頭の中をぐるぐるしているだけで
妙に静かな時間がコツコツと過ぎていくだけで。

もうどうにもならない!と思い
水を全部ゴクゴクと飲み干して
「やっぱり出ようか」と

奥さんの手を引き、なんとなく足早に
すいません…と言い残し
その店から逃げるように出ていった。

お店を出ると、街中クリスマスで
楽しそうなカップルや
お腹いっぱいーと話している
親子なんかが自分たちの横を
通っていく光景が
何とも切なかったのを今でも覚えている。

僕たちは付き合いだして初めてのクリスマスに
美味しいディナーもできず
人並みを避けながら
お互いなんて話しかけたらいいのかもわからず
歩いていたら、奥さんが僕の手を引き立ち止まった。

あそこにケンタッキーのクリスマスセット売ってるよ!
やっぱりクリスマスはケンタッキーのほうがいいよ!行こう!

そう言って、さっきの大失態を
なかったことにしてくれた。

そして無事ケンタッキーのクリスマス仕様のセットを買い
なんとなく見た目が街に馴染んだ僕たちは
お互い顔を見合わせて
大笑いしながら帰りました。

男の子として
やっぱりカッコつけたかったけど

僕は、この頃から
実は奥さんに
助けられ守られていたんだなっと

毎年クリスマスになると思い出す
苦くて甘い記憶である。

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